今週のお題「お気に入りのTシャツ」
あれはいつごろだったか。我が家はネズミ渦にあった。立て付けのクローゼットが箱型ではなく骨をそのまま家に組み込む形のものだったため、大きなくまねずみがどこからか入り込み、引き出しを開けたら寒々しく食い荒らされた衣類と異臭が漂っていた。
会社員をしながら、まるでおとぎ話のように聞こえる天才たちの伝説に胸踊らせていた。バスキアもその一人。ユニクロで!買ったバスキアのTシャツもその被害を免れるものではなく、腰のところに大きな歯形がついていた。
もう着られないのだろうか。
いや、そんなはずはない。母はもうそんなもの捨てなさいと言ったけど、捨てられないわ。ドローイングが僕の仕事だからといい、一着何十万円もするアルマーニのスーツに身を包み、絵の具だらけになって絵を描いていたバスキア。例えユニクロのTシャツだって、そんな思いのこもっているものは捨てられん。
というわけで頑張って洗濯した。
今となっては、背中の歯形もなんだかハプニングみたいでいいと思っている。
この夏どころか毎夏インナーで活躍し、もうよれよれで外には着ていけないけど、家着にして、くつろぐときが誇らしい。