さてとまる

日々を綴る

女の人差し指

今週のお題「もう一度見たいドラマ」


昭和15年11月。日本が戦争に向かう頃の東京が舞台。
婚約者が出征して破談になり、心に穴が空いているときに、ふと出会った人と恋に落ちるお話。

主演は田中裕子さん。はかない風情が最高でした。
婚約者は小林薫さん。りりしく素敵でした(軍服が似合う、古風な面構えなんですよ、若いんだけど)。
そして、私がこのドラマをもう一度見たいと思う理由がここ。主人公が恋に落ちる売れない物書き(実は無政府主義者で、特高にマークされている)を演じた四谷シモン様。思い出補正がかかっているとはいえ、今でもため息がでる。

拝見したときはまだ私も20代の前半で、これは悲恋の物語だったので、なんと悲しいことがあるものかと思いましたよ。普通の時代ならなんてことないこと。けれども背後に戦争の影があって、そのせいで全てが上手く行かなくなる。この恋愛適齢期の主人公の落胆如何ばかりか。この時代の女性は多かれ少なかれみんな、こんな思いをしていたのかと考えると、小さな義侠心が頭をもたげて、こんなことあっていいはずねーよ、と戦争の悲惨さと言うものが心に刻まれました。

演出は久世光彦さん。原作が向田邦子さん。
ささやかな市井の出来事を通じて、戦争とはどういうものかということを教えてくれる秀作です。

すごく昔(1986年)のドラマなので、既にDVDも廃盤となっているのが残念。
向田邦子新春ドラマスペシャル」シリーズの一つなので、できればシリーズごと再発してほしい。