さてとまる

日々を綴る

散財

今週のお題「初任給」

昨日、テレ東の「ワールドビジネスサテライト」を見ていたら、某社の新人の方の初任給が今の私の俸給とかなり近い額で驚いた。そんなにもらってどうするのだろうか。使い道に困らないか?

だがしかし、今は私が新人だった頃のような、のんきでお金のかからない時代ではないしな。取ったら取っただけ持っていかれるという過酷な時代だし。そう考えると生活防衛という側面もあるが、企業の賃上げはお上にとってもいいことなのか·····

一番に希望していた番組製作会社にフラレて、新橋の小さなソフトウェアの会社に入った。これ、書いたと思うけど(はてなブログって自分の記事検索がないのが残念よね)、新卒で入社というまさにその時期に父が亡くなり、ちょっとおかしくなっていた。

専門学校を卒業した年下の同期がサクッと書いちゃうコードも、文系大学を出た初心者の私にはチューターさんがついても何日もかかる。焦らなくてもいいからと言われたけれど、どうなのよこれは、といつも思っていた。景気が良かったし、素人から育てる余裕がまだあったのだろうと思う·····が将来にはなんの展望も見えず、自分がただのうすのろに思えただけだった。

初任給。そんな自分のプライドを支えるために、なんかキラキラしたところに行きたかった。そうだ!千疋屋に行こう!会社から十分だ。

と、言うわけで銀座!の8丁目にある千疋屋に行ってフルーツパフェを食べた。銀座、と高級果物店、という装置がプライドの維持に必要だったのだな。下らない奴だ。だが、当時の素敵な千疋屋は、高い天井から観葉植物のつるが下がって、椅子やテーブルはミッドセンチュリーっぽく、ガラスの大きな窓が温室のようだった。自分の希望通りキラキラしていた。フルーツパフェはおいしく、お土産にシグネチャーであるフルーツサンドを買った。したいことを全部かなえる。そのために使った初任給は、いま考えると、贅沢だったなあ、と思う(生活もなかったし。浮足だってたことは否めないけども)。

その後、会社を辞めたりまた就職したり怒涛の人生いろいろだったが、自分が灰色に染まっているときは、キラキラした場所へ行けばいい、といういいのか悪いのかよくわからないくせがついた。お金があっても無くてもその場所に行ってみて、ちょっとしたおみやげを買ったり、お茶を飲んだりして、そこのパワーをもらう。一瞬だが自分の人生を塗り替える。そしてしょぼい自分に戻っても、また行きたいなと思って頑張る。それができるということを、初任給が教えてくれた。働いてお金をもらうというのは尊い。蓄えることも大切だけど、それと同じくらい、散財というのは必要と思う。