「国宝」を見てきた。
だが、任侠の倅という設定は要らなかったのではなかろうか。そんなものなどなくても、伝統芸能の世界は過酷なものだし。入れ墨もなあ。一回見ただけではそれを出す意味がよくわからなかったし。万菊さんが簡易宿泊所みたいなところで最後をむかえる、というのも、なんというか、河原乞食の最期みたいな感じで、ちょっと設定に難がある。
でも、あの世界の、この世のものではないような不思議な感じはとてもよく出ていた。そこに足を踏み入れたら、そこから去るのはとても大変な世界。芸事の世界は、芸の神様に人生をささげる仕事だから、狭くて濃くてそして人を離さない魅力がある。
吉沢さんも横浜さんもこれからの人なので、その歴史の1ページに伝統芸能が刻まれたというのはとても素晴らしいことだと思う。きっとこれからいろいろなところで歌舞伎のことを思い出し、あれをやっておいて本当によかったと思うのではないだろうか。
また、監督も李相日さんでよかったと思う。日本人の監督さんだったら、視点が近すぎて、ありきたりのものになったのではないだろうか。
若くて素晴らしい俳優さんの一里塚。細かいところは気になるんだが、その気迫を堪能する映画と思います。