
昔、地球に住んでいた。
こんな空が見えて、ほんとにきれいだったなあ。
ちょっとしたきっかけで、食料が足りなくなって、エネルギーもなくなって地球の人口の三分の一が火星に移住しなくちゃならなくなって。
老人は宇宙船地球号に残れなかった。
姥捨てのように火星に来て、空気の薄い砂漠を耕さなければならなくて、仲間がたくさん亡くなったよ。私?私は楽観的なのが良かったんだろうな。そりゃ長いこと楽をしていた体を酷使するのは大変だったけど、気づいたんだ。働いて疲れたあとに食べるご飯はおいしいし。たとえそれが初めは乾燥した米や豆にほんの少しの水を注ぐものだったとしても。先ず水を使えるようにしなきゃなあ、と思い、火星の地下にある氷をみんなで掘った。そして食べ物も小さなプラントから始まって、すこしずつ。たとえプラントベースでも、こうやって肉の味のするものを食べられるとは。いい時代になったものだ。
皮肉なことだけど、私たちが火星に移住して6年目の秋に、大きな核戦争が起きた。地球以外どこにも逃げるところなんてないのにね。なんて人間は愚かなものなんだろう。私たちは夜明けにニュースを聞いて、急いで飛び起きて地球の方角を見たよ。真っ赤に燃えていて、火の玉みたいだった。
人類は途絶えたって?
私たちの仲間にはわずかだけれど若者もいたよ。子どもも最初の一人はうまくいかなかった。みんな必死だったよ。それからまたすこしずつ。
こんなに子供の声が聞こえるようになるとはね。
過ぎたるはなお及ばざるが如し、っていうだろう?知らない?最近はもう学校では教えないのかな。行き過ぎちゃうのは、なんにもしないのと同じって意味だよ。地球も、人類もね。
と、いうようなことを思い起こさせる青空だったので書いてみた。
現場からは以上です。