さてとまる

日々を綴る

時計、かなあ

今週のお題「人生で一番高い買い物」

数年前、何をとちくるったか、大して必要でもないのにブランドものの腕時計を買った。貧乏なので並行輸入で元々の値段の3割くらいになっていて、安いわー、と思って買ってしまうおばさん消費である。某有名サイトで買ったので、まーそれはない、と思ってはいたけど、ひょっとしたらバッタもんかも、という疑いもぬぐい去れなかった。
さて、大した必要もなく私に購入されたそれは、大した必要もなかったため、いわゆるタンスの肥やし状態になっていた。ある日、たまたま季節のものを取り出そうとして、その箱を見つけ、まだあったんだ……と思いだし、中身を取り出してみたら、当たり前というか、止まっていた。むくむくともったいない精神が頭をもたげ、電池を変えて、動くようにしないと、と思った。よく見ると、ちょっと歪んだ感じの文字盤がかわいい。買うとき、ちゃんとみなかったの?と思われるかもしれないが、買うとき見ていたのは値段だったのだ。よく見たらかわいいのである。惚れ直す、というか、え、ちゃんと見たらかわいいじゃん、という。そんなところにドラマを求めるな。
ブランドの時計なので、まさか「TicTAC」に持ち込むわけにも行かないし、こんなところにばかり面子を持ち込むため、添付の保証書を見た。正規代理店。○○ウォッチメゾン。どひゃーΣ(゚Д゚ノ)ノ、日本橋の、あのお城のような建物か。それより何より、これ、本物かなあ?で、かれこれ二月くらい悩んでいた。だって敷居が高いんだもん。
だがしかし、よく見るとかわいいこの時計、もう一度動くようにして連れて歩きたいぜという思い抗しがたく、行ってみた。

ありがたいことに本物だったわけだけど、長く使わなかったせいで、電池の接続部分にかびが生えてしまい、修理のため入院することになった。全治1ヶ月で、病院はスイス。修理代は買った値段の8割くらい。もう、目が飛び出るかと思いました。いい時計を持つって大変なこと。たかだか○万円の時計でこれだもの。セレブリティの人ってほんと、お金持ちなんだなあ、と実感した。

この時計を買おうと思った背伸びの理由は、その頃憧れていた人が(まー、つまりマスを相手にするすごいセレブリティだったわけだが)、すごく素敵な時計をしていたからで、それはもちろん手が届かないけど、自分もちょっといい時計を持ちたいと思っていたのよね。でも、タンスの肥やしにした挙げ句、かびを生やしてしまうという。ほんとに見栄で私に買われてかわいそうなことをした。この時計は時計でそれなりにかわいいのに。

と、いうわけで1ヶ月半くらいかかって、スイスの病院から戻ってきたそれは、きちんと動くようになり、だがしかし、長く放っておいたため、ベルトが色褪せてしまっていた。病院代を払っていたため、ショウケースに並ぶベルトで買えるものがなかったのだけど、恥を忍んでお店の人に
「えー、この時計に合うような、8000円くらいの革のベルトはないですか?」
とひっそり聞いてみた。
そうしたら、かわいいクロコの型押しを用意してくれまして。

もったいなくてそうしょっちゅうは着けて出られないけど、なるべくするようにしている。だが、最近、カレンダーがちょっと遅れぎみなのだが。休みの日に取り出して、柔らかい布で拭いたり、もちろんカレンダーもリューズを巻いて合わせてみたり。大切にしないと、また、スイスに入院ということになってしまうので。

この年になって時計との付き合いかたを学ぶとは。いやはやほんとに高い買い物でした。